理事長 式辞


 たった今、卒業証書を授与された10期生の皆さん、須磨学園中学校卒業おめでとうございます。卒業式や入学式で話をしています。ところが、2年3年経つと誰も私の話を覚えていません。自分自身が忘れてしまうこともあります。今日は本来なら言うべき式辞、みなさんの将来は輝かしい未来が待っていますという類の話はやめます。ということで、少し楽にして聞いてください。

 この3年間、色々なことがあったと思います。お疲れ様でした。失敗したことはよく覚えていると思います。失敗したことは大事です。失敗して良かったですねと言いたい。なぜなら、成功したことよりも失敗したことの方が学ぶことが多いからです。失敗したことを覚えていてください。また、思うようにかないこともあったでしょう。なぜ思うようにいかなかったかを考えてください。次はきっとうまくいくと思います。人との関係に悩んだこともあると思います。他人から傷つけられた、悲しい思いをした人もいるでしょう。これも良かったねと申し上げたい。あなたは少なくとも人の痛みが分かる人になったと思います。大事なことです。泣いている人がいたら、なぜ泣いているのか聞いてあげることができるでしょうし、泣いている人の気持ちが分かると思います。
 皆さんは4月から高校生になられます。高校生になるお祝いなどは高校の入学式にまわすとして、他に言いたい事があります。

 なりたい自分の姿は見つかりましたか。ほとんどの人はまだ見えていないと思います。この先、皆さんはあと3年でどこの大学に行きたいか決めて試験を受けることになります。ところが、5年後大学入試制度が大きく変わります。どういう風になるかというと、勉強だけではダメですよ、学力だけではダメですよとなります。大学は学力だけある子ではなく、もっとほかの力がある子に来てほしいと思っています。2020年、今のJ1学年から大学入試が変わります。勉強だけできてもダメです。他に何がいるのかというと、主体性、考える力、判断力、思考力、表現力など色々言われています。どうやって試験をするのかと思っている人もいると思います。大学では色々な人が求められています。勉強だけできる人にきてほしいわけではありません。チームワークも大事です。みんなで色んな事が一緒にできるか、助け合いながら協調してできるか、リーダーシップをとってできるか求められています。
 皆さんは、今までのペーパーテストの最後の世代です。1つ覚えておいてください。なぜ大学が入試制度を変えるかというと、勉強だけできる人は社会に出ても活躍できないという認識が広がってきました。OECDや社会の要請で大学は変わらないといけなくなりました。
 社会はものすごい勢いで変わっています。皆さん、2030年問題というのを知っていますか。2030年にはこんな予測が出ています。今ある仕事の半分がロボットやコンピュータや人工知能(AI)にとってかわられます。今から14年先です。すぐに来ます。なくなる仕事に、学校の教員も入っています。私はそれを読んで大きな衝撃を受けました。教員が要らないとなると、学校は何をするのか、教員は何をするのか。大学も要らなくなると言われています。知識を得るだけであれば、インターネットにあります。色んな大学がネット上に講座を開講しています。だから、主体性があれば、知識はすぐに手に入るようになっています。予測は予測でしかありませんが、そういう世の中になると言われています。是非、家に帰ったら調べてみてください。皆さんがこれからの進路、将来を考えるときに参考にしていただきたいと思います。

 コンピュータの原型を作ったパロアルト研究所のアラン・ケイという人が、「未来を予測する最良の方法は、それを発明してしまうことだ。(The best way to predict the future is to invent it.)」と言いました。本校のテーマである「なりたい自分になる。そして・・・」、自分自身でこうありたいと願い、それを実現することと根底は一緒だと思っています。この春休み、皆さんにお願いしたいことは、色々な人の話を聞いて、自分自身について考えて欲しいと思います。色々な事が自分の思うように行かなかった人もいると思いますが、すべての経験は無駄になりませんので、自分について考えてほしいと思います。

 全く皆さんに対しての卒業の言葉になってないかもしれませんが、お祝いの言葉としたいと思います。


2016年3月18日 須磨学園 理事長 西 泰子