理事長 式辞


 この冬は例年以上に寒さが厳しく、春の訪れが遠くに感じた冬でした。校庭の白梅は今週に入ると咲き始め、春の訪れを告げているかのようです。

 先ほど、卒業証書を授与された須磨学園高等学校15期生409名、ならびに須磨学園高等学校中学校7期生の84名の皆様、ご卒業おめでとうございます。 この喜びの日をともに迎えさせていただくことを皆さんに感謝します。保護者の皆様、ご子息ご息女のご卒業を心よりお祝い申し上げます。 立派に成長された子供さんの姿を前にされて、感慨もひとしおのことと存じます。そして、今まで生徒達を見守り支えてくださった全ての皆様の数多くのご支援に対し、心より御礼を申し上げます。 また、この3年間、皆さんによりそい指導にあたってきた山本理貴部長を始めとするK3学年、V2学年の教員団の厚く深い情熱と健闘をこの場をお借りしてたたえたいと思います。 私も先生方の姿に心を打たれ触発された一人です。

 さて、卒業の日を迎えた皆さん。7期生、15期生の皆さんは一人一人が個性にあふれ明るく元気な人達の集まりでした。 とても素敵な学年だったと思います。今日のこの日は、場所と時間を共有したクラスメイトとの6年間または3年間の須磨学園での生活に別れを告げ、新しい生活にお入りになられる、 それぞれの道を進んでいかれる日です。社会から半分閉じたこの狭い空間で過ごし、日常の生活に埋没している私にとっては、これから広い世界に出ていこうとする皆さんがまぶしく映ります。 その皆さんにお伝えしたいことは数多くありますが、その中から一つ話をさせてください。

 非常に個人的な話ですが。私の父親の話です。父が死んだ後、本校の先生から聞いた話です。大正生まれの父は戦争に行き、航空母艦の偵察機に乗っていました。 偵察飛行中、敵機がやってくると雲の中を飛んで母艦に戻ってきたと聞きました。雲の中では当然のことながら前が見えず、自分がどこを飛んでいるのか分からなくなります。 その時、どうしたかというと、「こちらに行けばいい」という直感に従ったということでした。そして、幸いなことにその直感はいつも正しく、無事に母艦に帰還できたということでした。
 私はこの話を聞き、直感に従うという言葉に大変勇気づけられました。父の話を聞いてから、先が見えないときやどうすればいいのか判断がつかないときに、 自分自身の内なる声に従うことにためらいがなくなりました。不謹慎に聞こえるかもしれませんが、直感にゆだねる判断があってもいいと思うようになったのです。 この先、皆さんが何かの問題に直面し、知性も理性も総動員してあらゆることを考え、それでも何が正しいのか知りえることが無い場合、 自分の内なる声に耳を傾けることは悪くはないと申し上げたいと思います。それはつまり、自分自身を信じることなのです。
 これからの世の中はグローバル化が進みますます多様になっていきますが、その中で、皆さんが皆さんの人生において「それなりの素直さと謙虚さ」を持って「なりたい自分」になるために、 果敢にチャレンジを続けていってくださることを願ってやみません。
 皆さんのこれからのご健闘とご活躍と、そして幸せをお祈りしています。

 以上をもちまして、私の式辞とさせていただきます。

 ご卒業おめでとうございます。お元気で。


2016年3月5日 理事長 西 泰子