理事長 式辞


 今年の冬はとても寒く、春はとても遠くに感じられる冬でした。 昨日から少し温かい風が吹き、校庭の桜のつぼみがいつの間にかほころんで、皆さんの入学とともに春がやってきたことを感じます。

 須磨学園中学校8期生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
 皆さんのご入学を心より歓迎します。 ご列席いただいた保護者の皆様にお祝いを申し上げます。子どもさんのご入学おめでとうございます。
 またご多用の中、ご臨席を賜りましたご来賓の皆様に感謝を申し上げます。ありがとうございます。

 さて、新入生の皆さん、 今日、何人の人が自分で起きて、自分で用意をして、学校にいらっしゃっいましたか。「自分のことは自分でする」中学生になった皆さんにまずはそのことを目標として言いたい。その第一歩として、まず朝自分で起きる。学校に行く準備を自分でする。大事な事です。今までの自分の生活を振り返ってみてください。勉強をしていたら、ほとんど全てのことをお家の方がやってくださいました。塾から帰るのが遅くなったらお迎えにきてくださる。テーブルに座ると温かいご飯がでてくる。それは、当たり前のことではありません。稀なことで、感謝するべきことです。 須磨学園は決して自由を謳歌する雰囲気の学校ではありません。どちらかというと厳しい。制服もあります。制服の着方にもきまりがあります。制携帯もあり、ルールを守って使うことが求められています。小学校にはなかったような校則もあります。また新しい教科「英語」が始まります。最初が肝心です。出遅れないでください。

 皆さんの中には「もしかすると何が何でも須磨にきたいわけではなかった。第一志望校がだめだったから仕方なくきた」と思っている人もいらっしゃるかもしれません。その人たちに言います。一日も早く気持ちを切り替えて、学校生活にのぞんでください。六年間を「いやだ、こんなはずではなかった」と思って過ごすのと「楽しい、素晴らしい、頑張ろう」と思って過ごすのは大きな違いがあります。この大切な時期にそんな不幸で残念な時間の使い方をしてはいけません。現実を受け入れて、そこからスタートすることからはじめましょう。

 皆さんは今何をしなければならないか。みなさんは今これからどうするべきなのか。それぞれに考えてみてください。もしかすると明日私たちも東日本をおそった災害と同じような状況にみまわれるかもしれません。その時、あなたはどうしますか。

 私たちのこの国は、将来どうなるのかわかりません。ですから、正しい知識に基づいた合理的な判断を冷静で理性的に実践する事をできる人になっていただきたい。私たちの街は、今までのように、当たり前のように明るい電気が煌々とともった街ではなくなるかもしれません。水道からでてくる水を当たり前のようにがぶがぶ飲むこともできなくなるかもしれません、食べ物もお腹いっぱい食べて食べきれないから残したり、好き嫌いを言ってお母さんを困らせるようなこと。そういう贅沢はもう許されなくなるかもしれません。豊かだった私たちの生活はこれから変わっていくことでしょう。そしてそれとともに、私たちも変わっていかねばなりません。 この六年間で、何をどれだけ身につけて、どういう人になりたいのか。考えるだけでなく、実践実行していってもらいたい。そのためには、一生懸命学ばなければなりません。

 私が、この地震で感じたことを少し聞いてください。自分のことしか考えない人たちがいました。自分の失敗を他の人の責任にする人たちもいました。傍らで、こういう時だからこそだれかが頑張らなければならない、と苦労も危険も厭わずに最前線で頑張っておられる方々がいらっしゃいます。見えないところで支えてくださっている方々がいらっしゃいます。日本はそういう人たちに救われて支えられてきているのです。

 津波がやってくるまで「皆さん、危険なので避難してください」と放送を続けたラジオのアナウンサーがいらっしゃいました。その人は津波で流されて亡くなられましたが、最後までみんなのために「避難してください」と放送をしておられました。私たちはそういう人たちに救われ支えられてきているのです。

 これからは、みんなが一丸となってこの困難な局面を乗り越えていくことが私たちに求められています。 自分は何ができるか。やらされるのではなくて自分からすすんですること。言われてしぶしぶするのではなくて、みずから進んですること。やらされるのと自ら進んでするのとでは、大きな違いがあります。みなさん自分の頭で考えて行動することのできる人。みなさんにはそういう人になってもらいたい。

 最後に皆さんに申し上げておきたいことがあります。
 それは、どんな人でも失敗します。くじけないでください。もちろん程度の差はありますけれども、失敗しない人などいません。そして、失敗することは決して悪いことではありません。むしろ、私はよかったね、失敗したのが今でよかったね、と言いたい。友だちとの関係で失敗をすることもあるかもしれません。そのとき大切な事は、「なぜ失敗したのか」それを考えて下さい。そして、二度目の失敗をしないようにすればいいことです。二度目の失敗をしてしまえば、三度目の失敗をしないように気を付ければいい事です。失敗を恐れず、間違うことを恐れずに、ひるむことなく果敢に、色々なことにチャレンジして下さい。

 みなさんのこれからの活躍を期待して私の話は終わります。

 
 



2011年4月2日 理事長 西泰子