理事長 訓話


 3学期の終業式です。 この1年の総括と4月からの新しい学年にむかっての区切りの時です。

 そのことについてお話をする前に、避けることのできない話題について話をします。 1週間前の3月11日に東北地方において大きな地震がありました。
 未曾有の被害を受けていらっしゃる被災者の方々に対する激励と1日も早い復興をお祈りします。
 そして現地の最前線で救援活動と復興活動にあたっておられる方々への敬意と深い感謝をもって、心からの声援を送ります。

 15年前に私たちも大きな地震にあいました。この神戸の街も多くの犠牲者をだしました。皆さんはまだ小さかったので覚えていないかもしれません。中学生はまだ生まれていませんでした。 その時の教訓を多くの人たちが今の生活の中に形としてもっています。

  この度の東北関東大震災は阪神淡路大震災よりも大きな規模でおこり、地震だけではなく、それに伴う大津波の被害を受けました。みなさんもTVの映像などでご存知の通りです。
 今なお救済されず、不安の中で時を過ごしておられる被災地の方々がいらっしゃいます。 ここで皆さんに考えていただきたい。情緒的な反応ではなくて、今私たちに何ができるか。何をするべきなのか。自らに問うてください。

 メディアは様々な情報を送ってきています。チェックしていたら、日本のメディアと海外メディア、例えばCNNやBBCやロイターやブルンバーグでは、この震災ニュースの扱いが違います。一番違うのは原発の扱いです。 どのように違うかというと、日本国内ではパニックを起こさないために「大丈夫だ」というメッセージを送っています。これは全国レベルにおいて不安が増大しているので、当然のことといえます。
 海外メディアも震災に関しては冷静な行動に対して、賞賛と激励のあたたかい言葉を寄せてくれています。
 しかしながら、地震の二次的な被害である原発の放射能漏れに関しては、非常にシビアな報道をしています。最悪の場合を想定して、その対応を自国の日本滞在者に呼びかけています。
 日本は当事者であり渦中にいるので、いたずらに不安を煽らないために慎重な報道になっています。
 地震は天災ですが、原発は人災です。そして、原発は日本だけでなく、他国へも世界に対しても大きな影響を与えるものです。それは人ごとではない。自分たちの生活に大きな影響を与えるものであるから、真剣かつシビアな見方をせざるをえない状況でしょう。

 繰り返しになりますが、私たちが考えなければならないことは、 「自分が被災者の立場であれば、どう感じるか」「どうするか」、そして「どうしてほしいか、何が必要か」です。そして、被災された方々に対して私たちは「何ができるか」「何をするべきか」です。
 色々なデマや風評も錯綜する中で「惑わされないで自分の頭で判断する」ということはとても難しいことです。
 余談ではありますが、友人から夜中にチェーンメールがきました。節電を呼び掛けるチェーンメールです。メールを読んでこれは大変だということで、教頭先生や各学年部長の先生に「明日から授業は電気をつけない。体育館の電気はつけてはいけない」というメールを作成して送ろうとしました。その前に気になって関西電力のホームページを見ると「チェーンメールに惑わされないようにして下さい」という記載を見て、大恥をかくことは免れました。このような非常時では、デマや風評が渦巻いています。流されず、煽動されず、冷静に判断して動くことが我々には求められています。いい意味でも悪い意味でも、私たち日本に生活する者は「疑うこと」をあまりしません。政府やメディアの報道を素直に受け取り素直に従う。そのことは、海外から大きな賞賛を受けています。
 しかし、その政府やメディアの判断が違っていた場合はどうするのでしょう。杞憂ですが、私はそのことについて少しばかりの不安をもっています。
 平時のルールと非常時のルールは違います。臨機応変な対応をしていきましょう。
 くどいようですが、再度繰り返します。私たち一人ひとりが「何がしたいか」ではなく「何ができるか」が問題だと考えます。「今何がしたいか」ではなく「今何ができるか」、一人ひとりに考えていただきたい。私たち一人ひとりの力は微力ですが、みんなが集まると大きな力を発揮できます。

 それでは、この春休みに皆さん一人ひとりが自分の頭で「考える」ことを期待して、私の話は終わります。


2011年3月18日 須磨学園 理事長 西 泰子