誓いの言葉


 本日、私たち5期生は中学卒業式を迎えます。
 私たちがこの日を迎えられることは喜ばしいことです。ご存じの通り、私たちがアメリカ研修旅行から帰国したその翌日、東日本巨大地震が起こりました。阪神淡路大震災のとき私たちは産まれていませんが、それよりマグニチュードも大きく、被害者も多い地震です。
 私はニュースを見ながら、偶然というものの皮肉を思いました。私たちが帰国するのが昨日でなく今日だったら。関空でなく成田だったら。空港で立ち往生していたテレビの中のグループは、私たちだったかもしれなかったのです。
 どんなに抗おうが、戦おうが、祈ろうが、泣き叫ぼうが、私たち人間は自然の猛威には勝てません。いくら繁栄しても、たった一つの地震でいとも簡単に一万人以上と思われる人が滅ぼされてしまう。人類の弱さを感じました。一人一人では、人間という生物は余りにも弱い。つい先日アメリカで骨をみてきた恐竜など、かつての地上の王者と比較すると、小さいし遅いし毛皮も牙もないし、弱すぎる。
 しかしだからこそ私たちは、工夫し、知恵を絞り、助け合って生きてきたのです。
 このような大災害を背にして、良い大学に入るとか良い企業に入社するというような、細かいことを誓いたくありません。ですが、私たちがたとえ祈ろうが、泣こうが、心を痛めようが、被災地の方々にとっては一切関係がありません。さらに、世界の不幸は、東日本の大震災だけではないはずなのです。
 ですから、平和の世に生活し、平和な卒業式を迎えられた私たちは、今このときを、最大限に全力で、生きたいと思います。

 「今このとき」は、常に過ぎ去っていっています。今私がこうして「誓いの言葉」を述べている間にも過ぎていきます。もしかしたら次の未来の瞬間には死んでいるかもしれない。何が起こるかわからない。
 だから今、生きている事に感謝を。ここまで育ててくれた人々に、教えてくれた先生に、支えてくれた友人に感謝を捧げたいと思います。
 そして、未来。それは良い大学に入るためだけのものではありません。己の未来は、己が選択するものです。決して先生方や親に尻を叩かれて決めるものではありません。悩んで良い。迷って良い。ただ、己のものであると自信を持てる未来。そんな未来を生きていける人間になることを誓いたいと思います。



2011年3月17日 卒業生代表 江 光希