学園長 式辞



 中学校ご入学おめでとうございます。私のお祝の話は3つあります。
 
 一つ目は「なりたい自分になる」ということを、どう、実行したらよいかということです。
それは、いろいろやってみるしかないと思う。最初になりたいと思った夢を持ち続けるということは、もちろん大切なことですが、大きくなるにしたがって、夢は変わります。だからいろいろやってみる。新しいことがでてきたら、どんどん、あたらしいことにとりくんでみるといいと思う。食べたい物を食べるというのは、食べてみるしかないのです。食べてみなければわからない。お料理はレシピをひっくり返してみてもわからない。実際につくってみて初めて、料理の味がわかる。その料理もいろいろある。麺が好きだからといって、今日、ちょっと寒い4月のはじめの日に、冷やし中華を作って食べたら美味しいか?冷たくて美味しくないね。冷やし中華は夏の暑い日に食べてこそ冷やし中華。でもそれは4月1日に冷やし中華を食べなければわからない。ということで、知っているということと、それを実際に経験したということは、全く違います。そのたくさんの経験を積み重ねることによって、その人にとってその時代その時代に、もっとも適した「なりたい自分」が見えてくると思うのです。だからみなさん、勇気をもってたくさんのことにチャレンジしてほしい。心の中で思っているだけではなくて、実行するということ。それからやってみてダメだったら、素直にどうしてそれがダメだったのか、というふうに反省する謙虚さをもってほしいと思います。
 
 二つ目は、現代はエレクトロニックの時代です。だから、お家にいて諸君らが毎日使うのは、電話であったり、テレビであったり、インターネットであったりします。もちろん、電話もテレビもインターネットも便利なものですから、電話やテレビやインターネットは、我々にとって、もはやなくてはならないものになってきているかもしれない。だけど、ここでひとつ覚えていてほしい。電話とテレビとインターネットだけではなくて、もっと大切なことがある。それは、「電話」の替わりに「手紙」を書くとことです。それは、「テレビ」の替わりに「新聞」を読むということ。「インターネット」の替わりに「本」を読むということです。みなさん、ぜひ中学時代に、自分の手で手紙を書き、毎日、新聞を読み、毎日、天声人語を写すという課題が出ています。天声人語を写すだけではもったいないと思います。自分の手で手紙を書いて、毎日、新聞を読んで、そして読書をするこの3つが私のお願いです。
 
 三つ目のお願いは、私は須磨学園中学校を楽しい中学にしたい。みなさんに、楽しく勉強をしてほしい。楽しさとは何か。楽しさとは一つしかないそれは好きなことをすることです。じゃぁ嫌いな勉強はしなくていいのか。決してそんなことはありません。嫌いな科目は、ぜひ、好きな科目にしてもらってとりくんでほしいと思います。勉強を嫌いと思った諸君は途中で取り残されてしまいます。ですから、世界一周の研修旅行、応援合戦や戦う体育祭、いろんな楽しいイベント、キャンプ、いろんな楽しい課外活動を、須磨学園はこの5年をかけて作ってまいりましたが、その楽しい学校生活に加えて、ぜひ、好きな科目を増やして勉強も楽しくやってくれるといいなと思います。楽しければ伸びます。楽しい科目は試験勉強をしなくても楽勝でしょう。嫌いな科目をどうしたらいいか。嫌いな科目を好きになるために、いるのが教員です。先生にぜひ、聞いてほしい。「先生、数学を好きになるにはどうしたらいいの?」「先生、この嫌いな歴史を好きになるにはどうしたらいいの?」嫌いな科目を好きになれる、それが中学校を楽しく過ごす秘訣だと思います。

 諸君らは、そのまま高校に進学します。高校受験という大変なゴールがない諸君らに、ぜひ、その分、中学生活を楽しんで送ってほしい。それが、私の切なる願いです。

2009年4月5日 学園長 西和彦