学園長 式辞



 入学おめでとうございます。  須磨学園のテーマは、なりたい自分になる、ということです。なりたい自分になるということは、自分の夢を実現するという自己実現であります。「なりたい自分になる」ということを書いてある文章を正確に読むと「なりたい自分になる。そして・・・」というふうに書いてある。これはどういうことかというと、「なりたい自分になるだけでは、まだ、完成していない」ということです。完成していないということはどういうことかというと、諸君らが高校を卒業して大学に行って、大学を出て社会に出る。そして、それぞれ個人の夢を実現する。なりたい自分になるということは、そういう仕事につくということだけではなくて、なりたい自分になった自分と社会との関係をどう確立していくかということにあります。つまり諸君らは、大学を出て、大学院を出て、社会に出て、それぞれが学んできた専門を生かした仕事をする。その仕事によって、社会の中で自分がどういう役割を担っていくんだということを考えていくことが必要であるということです。
 それはどういうことかというと、一人ひとりの持って生まれてきた使命は一人ひとり違う。お医者になる人、法律家になる人、研究者になる人、世界を相手にものを売る人… 一人ひとり目指すものは違う。でも、その一人ひとり違う目的・目標を専門という形で持って、それで社会に役に立つ、そういう生き方を今日から考えてほしいと思います。

 さきほど理事長も申し上げましたが、我々の学校は厳しい学校であります。少しねじをゆるめようとしたり、少しガイドラインを低くしたり楽にすることも考えました。しかし我々は、あえて、厳しい道を選ぼうと毎年、決心をしています。なぜ、厳しい選択をするのか。なぜ、厳しいルールを課すのか。そんなことは嫌だ。そんなことは無駄だ。そんなことはしたくない。という、そういう気持ちにみんながなることも、わかります。ですが、私はその厳しさが非常に大切な値打ちがある気がしています。今日、みなさんは学校から帰るときに赤信号を無視して渡る人を見てください。生徒の中には、赤信号でも車が来なかったら渡ってもいいと思う人も、そういうことをしている人もあると思います。私は赤信号だったら渡りません。東京駅の朝、5時45分、東京駅前にはほとんど誰もいません。赤信号も渡ろうとしたら渡れます。私は神戸に帰る朝一番の新幹線に乗るとき、信号が赤でも待ちます。なぜ、こんなことをするのか。それはそうすることが自分の価値観を守ることだからです。辛い。辛くても自分の価値観を守るということを押しとおすというのはどういうことか。私は、それは自分が美しくあるために、ということだと思います。
 諸君らはこれから過ごす3年間に、苦しいことや悲しいこと、大変なことがたくさんあるでしょう。そこで、あえて自分でルールを守ってしっかりやるということ、それを支える価値観は、「それがルールだから」「勉強して大学に行かなければいけないから」。そういうことではなくて、それは、「それが自分の生き方だから。そういう生き方をする自分が美しくありたいと思う」ということを覚えていてほしいのです。私は今まで、そうやって苦しいときを、乗り越えてやってきました。

 最後に、3つめのお話です。高校生活は、苦しいことばかりではありません。高校生活は、楽しいこともたくさんあります。須磨学園の行事、須磨学園の課外活動、クラブ活動、みんな、楽しいことがたくさんあります。卒業式の日に、3年間の高校生活で、何が楽しかった?と私はよく聞きます。そうすると、勉強が楽しかったという人はほとんどいません。でも、「学校の行事が面白かった」。行事もクラブ活動も、遊びのためにあるのではないのですが、楽しいということは、やはり記憶に残ります。そこで、みなさんに、最後に考えてほしいことは、楽しいということはどういうことかということです。楽しく学ぶということはどういうことか。いやな勉強をするということは嫌であるという考えを捨て、嫌な科目は好きな科目になんとかする。そうして楽しく学ぶということが、自ら学ぶ上で一番大事だということを、これもぜひ、覚えておいてほしいと思います。

 最後に3年間、終わってみて一番大きな残るもの。それは友達です。ですから、一緒に学ぶ友達をつくって、大切にして下さい。高校時代の友達は、間違いなく一生を通した友達になります。

 諸君らのこれからの3年間の須磨学園における健闘を祈っています。
 

2009年4月4日 学園長 西和彦