理事長 式辞


 今年の冬はとても寒さが厳しく、桜の咲く季節がとても遠く感じられていましたが、今日、待ち構えていたように咲いた桜の中、この坂道を登っていらっしゃった共学十一期生の皆さん、ご入学、おめでとうございます。私たちは、みなさんが入学してこられる日をお待ちしていました。これからの三年間、どうぞよろしくお願いします。
 保護者の皆様に、お祝いを申し上げます。ご子息、ご息女のご入学おめでとうございます。これからの三年間で、子どもさんが心身共に大きく成長されることを願っておられることと存じます。
 ご来賓の皆様、本日はお忙しい中にもかかわらず、ご臨席を賜り、ありがとうございます。これからの三年間、子どもたちを温かく見守り激励していただくことをお願い申し上げます。

 さて、新入生のみなさん、九年間の義務教育を終え、これから始まる高校生活に対して、不安と期待で胸をいっぱいにしておられることと思います。最初は、いつも不安になるものです。みなさんが、この坂道をのぼることが苦にならなくなった頃に、その不安は解消されていることでしょう。

 兵庫県下には二百校を超える高等学校があります。新入生の皆さんは、その中で、この須磨学園に進学する道を選ばれました。須磨学園は、世間では、「厳しい学校」、「しんどい学校」だと言われているようです。
坂道がしんどい、だけでなく、休みが短い、勉強が大変、校則が厳しい、制服をちゃんと着ないと叱られる、茶髪にすると注意される…。制服がなくて、校則もさほど厳しくない自由な学校もあります。そのような別の学校にいくという選択もあったはずですが、皆さんは、この須磨学園で三年間を過ごされることをお決めになりました。
 須磨学園には、須磨学園独自の校則があります。守っていただかないといけないルールもあります。自分の意志で決めた学校ですから、責任と自覚をもってこれらに対応してください。

 私たちは、これからの三年間は、皆さんが将来大学で「さらに深く学ぶ」ための準備期間であると位置づけています。そして、それは同時に皆さんが大人になってから、社会の中で、「よりよく生きていくために必要とされる知識や知恵や、人間としての在り方を確立する期間」であると、捉えています。

 一般的な話をします。中学校高等学校では、与えられた問題を解くために、より多くの知識を吸収しなければなりません。また、特定の分野で突出するよりも、いろいろな科目で万遍なく良い点をとるための指導が行われてます。しかしながら、今の社会が必要としているのはそういう優等生型の人ではなくなりました。

 今から十年ほど前に、経済界から提出された「創造的人材の育成に向けて」という提言があります。これがきっかけとなって小中高の学習内容が見直され、いわゆる「ゆとり教育」と呼ばれるカリキュラムが作られました。
 この経済界の提言によりますと、
「従来の日本社会では、『欧米に追いつけ、追い越せ』を目標にしたため、定められた目標を効率的に実現する人材を重点的に育成してきた」ということです。
 その結果、「知識の量は多いけれど、自らの頭で考えて行動することが苦手な人が増えてきた」という批判がでてきました。今後、学校の教育に求められることは、時代と社会の変化と共に変わっていきます。昨年は、「主体的に行動し、自己責任の観念に富んだ、創造力あふれる人材の育成」としています。これは、その三年前の提言と少し違っています。三年前は「創造性」ではなく、「国際性」でした。

 このように社会が変わるにつれて、「求められる人材」が変わってきています。「求められる人」になることも大切ですが、須磨学園では、みなさん一人一人が「なりたい自分になる」ことを期待します。

 皆さんが「自分自身がこうありたいと思う自分になること」、そして、社会とどのように関わりをもっていくのかを、考えていただきたい。みなさんは、自分の夢や目標に近づくためには、苦しいことも、辛いことも、嫌だとは思わない。それを乗り越えて、挑戦しようとする、精神をお持ちだと私たちは思っています。

 ですから、私達の使命は、皆さんをやさしく育み導くだけでなく、時には叱咤激励しながら、皆さんの進むべき道を示し、環境を整え、困難も喜びも共にしながら成長していくことです。ひたむきな努力を積み重ねてきた人にもたらされる、深い喜びと満足を、皆さんに経験していただきたいと思います。

 十五歳の皆さんの前に広がる世界は広く、皆さんが登る山は高く、そして頂上に続く道はけわしい道かもしれません。その山道をみんなで登っていきましょう。より高く登れば、より広い世界が見えてきます。そして、より遠くまで世界が見えます。
 三年後の皆さんには、どのような景色が見えているのかを、楽しみにしています。

 保護者の皆様、これからの須磨学園高等学校での生活は、保護者の皆様のご理解とご協力なくしては成り立ちません。どうぞ、温かいご理解とご支援、ご協力をお願いいたします。大切なご子息ご息女を私どもに託していただけることをうれしく思います。と、同時にその責任の重さに身が引き締まる思いでございます。
 私達は、ご子息ご息女を全力でお育てし、情熱を持って指導にあたらせていただくことを、学園を代表して、ここでお約束いたします。

 それでは、須磨学園高等学校十一期生の皆さん、元気で出発しましょう。これからの皆さんの健闘と活躍を祈って、私のお祝いの言葉といたします。



2009年4月4日 理事長 西泰子